コム・ラボ 有限会社&共栄化成 株式会社(近代セールス掲載)

大東メーカーズのロゴ

第五回 コム・ラボ有限会社 様&共栄化成 株式会社 様(近代セールス掲載)

商品特性や事業者の熱意・強みを捉え事業の流れを変える

大阪府大東市は、大阪市・門真市・東大阪市といった都市と隣り合わせでありつつ、飯盛山をはじめとする自然も豊富な街だ。工業地域と住宅地域が近く、製造業からサービス業まで、多種多様な商業が活躍している。

そんな大東市に軸足を構えているのが、我々「大東ビジネス創造センター(D ‒ Biz)」である。大東市のスローガン「大都市より大東市」を踏襲しつつ支援に取り組み、今年で5年目を迎える。

支援において私が大事にしていることは、Bizならではのスピード感だ。というのも、Bizに相談にくる方はほとんどが経営者なので、我々は毎度経営戦略の決定者と打合せができる。今後の戦略を考え、新商品や新サービスを作り、場合によってはネーミングやキャッチフレーズ等の情報発信の方法まで考える――こうした取組みを、会社の方針として経営者に意思決定してもらいながら進められる。このスピード感こそが、Bizモデルの最大の強みだ。

そんな長所を活かした支援事例を2つ紹介しよう。

激戦区の市場で際立つブランディング支援

「新商品を開発したので展示会を開催、リリースも5回発信したが、どこにも取り上げてもらえなかった」

「コム・ラボ有限会社」の小牧保之社長が初めて相談に来た際の第一声である。商品はすでに完成済みのため、我々に求められていることは「お金をかけずにどこまでリブランドできるか」だった。

コム・ラボは2000年に創業した化粧品等のOEMメーカーで、確かな製造力とコンサルティング力がある。今回開発したという商品は霧状の除菌剤を連続噴射する、設置型の除菌スプレーだ。コロナ禍において除菌・抗菌関連のグッズは確かにニーズがあるが、市場は激戦区だ。メジャーメーカーの商品も多く、コム・ラボの新商品が際立つためのブランディング戦略が必要となる。そこで私はまず商品名の変更を提案した。商品特性が「除菌」であることがすくに分かるよう、端的で明確な商品名に変えるように提案したのだ。

これに対して小牧社長はすぐに了承したが、幹部社員にはなかなか受け入れてもらえなかった。そこでD-Biz一丸となって幹部社員らを説得。競争著しい除菌・抗菌グッズ市場で目立つためには「簡潔に商品特性がわかるネーミング」が必要だと伝え、何とか了承を得た。

さらに、ポジショニングを設定することも提案した。消費者が使用シーンを想起できない商品は購買意欲を喚起できない。そこで商品の使用シーンを想定することで、「お客様がその商品を買う理由」を明確にする必要があったのだ。

以上を踏まえ、リブランド後の商品名は「約1分で安心除菌『密閉空間専用』除菌バスター」とした。また使用シーンを、新型コロナウイルスの感染経路として懸念されている「密閉空間(リビングルーム・寝室・トイレ・洗面所・玄関・車内等)」の除菌と定め、PRした。

リブランド後の新製品は展示会や商談会で好評を得て、OEMの依頼だけでなく自社商品として初めて大手量販店での販売も決定。PRリリースもスルーされず、新聞等のメディアに掲載された。

現在ではコム・ラボのブランディング課長のようにD-Bizを扱っていただき、今後のシリーズ展開のミーティングにも参加している。

高い環境意識と技術力を適切に発信

次に紹介するのはプラスチック製品製造業の「共栄化成株式会社」の事例だ。

支援に際し、私はまず松原美奈社長に対し事業内容についてのヒヤリングを重ねた。すると、同社は昨今のように環境への配慮が一般化していない20年以上も前から再生ペット成形事業に取り組んでいると分かった。

取り組みを始めたのは、創業者である松原五郎前社長。当時は周りを見渡しても再生ペット成形に取り組んでいる事業者はおらず、試行錯誤の毎日だったそうだ。一時期は、前社長や社員が総出で使用済みペットボトルを回収・洗浄し、原材料として使用していた時期もあった。

松原社長は当時「なんでこんな熱い夏にもペットボトルを洗わければならないのか」と思ったそうだが、前社長は繰り返し「これはゴミではなく原材料だ」と、高い環境意識と信念をもって取り組んでいたという。

そもそも再生ペットの原料は品質が不揃いで、加工現場での柔軟な加工・工夫が必要だ。そうした技術は一朝一夕で習得できるものではないため、積極的に取り組む事業者が少ないのが現状である。

その点、共栄化成には、20年以上の経験と知恵がある。同社は再生ペット原料の分量を自在に調整し、発注元は市場のニーズに合わせた高品質な商品の製造が可能だ。前社長の熱い思いを実現する、環境意識と機能性を兼ね備えた再生ペット成形ーこれこそが共栄化成の強みなのだと、私は痛感した。

では、売上改善支援においてD-Bizが何をしたか。

実は特別な支援はしていない。事業内容・経緯・前社長や松原社長の熱い想いに感動し、それらを発信するお手伝いをしただけだ。

具体的には、「再生プラスチックカンパニー」というタグラインとサービスメニューを一緒に開発し、発信した。

すると、環境意識の高い大手メーカーなどの目に留まり、現在までに順調に受注獲得を続けている。

中小企業の魅力はスピード管と継続力だ。そこに我々の知恵やアイディアを加え、お金をかけない方法で事業の流れを変えていく。これが我々の支援の基本スキームだ。

D-Bizを含め、各Bizでは月100件近い相談を受けている。全国には、それだけの事業者支援をこなす強力なセンター長やアドバイザーがいるということだ。我々は常に情報交換等の連携をし、各地の中小企業や製造者と向け合っている。「中小企業支援」こそ、Bizの魂そのものだ。